大地は(あまね)白磁の熱砂に覆われて、変化に乏しい砂漠の景色は、どこまでも、どこまでも、漠々(ばくばく)として続くのだ。

 吹きすさぶ風に造形されて、無数に並ぶ砂丘の波は、遠近感さえ与えぬほどに、大スケールの壮観だ。雲一つ無い晴れ空は、青一色に澄み渡り、球電のような太陽だけが、ギラギラ激しく光るのみ。

 白光の針が大地に刺さり、陽炎(かげろう)ゆらめく地表付近は、影も生まれぬ灼熱だ。この暑さには蛇も敵わず砂中(さちゅう)へ隠れ、見渡す限り、生き物の影も見られない。ただ一人だけ、砂漠を歩く、この旅人を除いては。

 サテンのような真砂(まさご)の海に、ブーツの跡を一すじ残し、果てなき砂漠を渡り行く。その頭には布が巻かれて、日よけのためか、顔もほとんど出ていない。布の隙間の両目だけ、行く先を凛と見つめているが、瞳に映るは砂ばかり。それでも彼は、歩くのだ。

 風に散らされ薄まってゆく足跡になど目もくれず、巻き上げられて視界を遮る砂の煙も(いと)わずに、ただ黙々と、まっすぐに。見渡す限りの砂の世界は余りに広く、その広大さに比べてみれば、彼の歩みは微々たるもので、足踏みでもしているようだ。

 しかし休まず歩かねば、太陽はすぐに沈みゆく。星の明かりが冷たく注ぎ、凍える風が身を叩く、冷厳(れいげん)の夜へ変わるのだ。冬の砂漠を旅する者は、一つ夜風を浴びる度、命の熱を奪われる。無闇に歩けば冷気に()たり、(むくろ)となって埋まるのみ。

 日中のうちに距離を稼いで、出来ることなら今日にでも、早く砂漠を抜け出たい。先日の町で聞いたことには、まっすぐ南へ進んでいけば、オアシスの町があるらしい。そこは遥かな昔から――それこそ魔法や(まじな)が、身近にあった時代から――要衝として発展し、栄え続けてきたそうだ。

 町を目指して歩くのだ、辿り着けねば野垂れ死ぬ。先を望めど砂しか見えず、孤独と不安は膨らむが、食糧と水の残りを見れば、引き返すことは許されない。前進以外の選択肢など、捨てねばならぬ旅なのだ。

 行商人の旅ならば、仲間を多く引き連れて、駱駝(らくだ)に乗って行くのだろうが、この旅人は砂を踏みしめ、共にするのは孤独のみ。荷物も決して余分に持たず、片道分の(かて)と水、そして多少の交易品を、袋に詰めて背負(しょ)っている。しかし彼には、これだけあれば充分だ。行商人とは元より違う、(まこと)の旅人なのだから。

 旅をすることそのものが、彼にとっての目的だ。安住などは捨て去って、気ままな風を追いかけて、心で世界と向かい合う。そんな厳しい道のりを、彼はどうして歩むのか、それは彼にも世間にも、さほど大事なことでない。

 とにかく彼は旅の中、この広大な砂漠を進み、ゆるく波打つ地平の先に、町が見えるのを待っていた。もちろん未だに辺り一面、眩しいほどに砂ばかり、オアシスなどは蜃気楼さえ見当たらない。

 ところが彼は、一つ砂丘を越えた時、見慣れぬものを目にとめた。砂の世界に一人たたずみ、マントを羽織った人影だ。携える杖の頭には、緑碧(りょくへき)に透ける宝珠を載せて、腰まで伸びた砂色の髪は風を孕んで(ひるがえ)る。距離があるのでよく見えないが、その風貌はまるで昔の、魔法使いのようだった。

 道しるべも無い砂漠では、人との出会いは珍しく、歩いてばかりのこの旅人も、誰かを見たのは初めてだ。ここで会うのも何かの縁と、少し話がしたくなる。サラサラ崩れる砂の斜面に、気を付けながら砂丘を(くだ)り、魔導士のもとへ歩み寄る。

 するとあちらも気付いたらしく、旅人のほうへ振り向いた。近づいて見れば二十代ほどの青年だったが、その顔立ちは中性的で、どこか虚ろな雰囲気だ。

 その幽遠な風貌に、旅人は少し警戒しつつ、試しに言葉を掛けてみた。

砂漠の風の導きを(デザルト・ベント・デル・デスティーノ)。ここで会ったも何かの縁だ、少し話をしていいか。人に会うのは久しぶりでな、砂漠は暇でしょうがない。何しろ独りの旅なんだ」

 すると魔導士は軽く頷き、静かな声で答えを返す。

「なるほどな、それなら俺も同じこと。最後に誰かと話した時はいつ頃か、思い出すのも難しい」

 乾いた風がその場に吹いて、彼のマントや砂色の髪をなびかせた。鋭く唸る風音の中、しかし魔導士のその声は、小さいながらも良く通る。一字一句に至るまで、旅人の耳へ届くのだ。

 奇妙な声だと思いながらも、旅人はさらに問いかけた。

「ところであんた、こんなところに何用だ? そんな奇妙な出で立ちで、旅人なはずは無いだろう。町への道が分からんのなら、同行しても構わんぞ」

「それは不要だ、俺は町へは帰れない。砂にまみれて生きること――それが俺への罰なのだ。俺が自分を許さぬための、終わることなき罰なのだ」

 暗く(よど)んだ魔導士の目は、空と大地を映し込み、時の彼方を凝視する。その眼差しに宿るのは、自責の念か、悲しみか。

 何のことやら分からずに、首を傾げて旅人は、躊躇(ためら)いがちに問いかける。

「どうやら何か、非常な理由(わけ)があるのだな。罰があるなら罪もあろうが、あんたの罪とは何なのだ?」

「どれほど昔か忘れたが、俺はこの場で人を殺した。たった一人の肉親を――」

 遠くを見ながら魔導士は、両の目尻を潤ませて、しかし涙は(こぼ)さずに、呟くようにそう言った。それきり彼は黙り込み、果てない砂の稜線を、じっと見つめているばかり。

 詳しいことはこれ以上、聞かないほうが良さそうだ。旅人は一つ息を吐き、重たい気分を入れ換えた。

「とするとあんたは、こんな砂漠で一人きり、過ごし続けているわけか。しかしそれだけ長期間、どうやって腹を満たすのだ? 懺悔じゃ腹は膨れぬだろう」

「こんな身体を満たせるものは、何一つとしてありはしないが、敢えて言うなら砂だろう」

 淡々と言った魔道士に、わけが分からず旅人は、首を傾げて問い返す。

「どういうことだ、砂だって?」

「同じ言葉を言わせるな。俺の中には砂がある」

 ぶっきら棒にそう言うと、魔導士は口に手を当てて、小さな玉を吐き出した。手の平に載せたその玉は、血のように赤い宝玉だ。しかも驚くべきことに、どことも無しに宝玉が、絶えずに砂を生んでいる。見る見る増える砂粒(すなつぶ)は、魔導士の手からこぼれ出し、地面へサラサラ落ちていく。

「俺の空虚な臓腑の中で、こいつは砂を生み続け、それでも尽きることが無い。幾百の年が過ぎようと、幾千の年が過ぎようと――」

 砂を吐き出す宝玉を、再び口へ戻し入れ、魔導士はそれを飲み込んだ。

 呆気に取られた旅人は、(しか)と両目を見開いて、震える声で問いかける。

「砂だけ食べて生きるだなんて、まさしく魔法そのものだ。あんたの珍奇な恰好を見て、もしかしてとは思っていたが、まさか(まこと)に魔導士だとは、驚いたことがあるもんだ」

「珍しいのか、魔導士が。昔は沢山いたものだがな、時が流れて世も変わり、全てが古びていくようだ」

 憂いを帯びた微笑を浮かべ、疲れたように魔導士は、短い息を吐き出した。

「そろそろ去ってはくれないか。話をするのは久しいもので、頭が痛んでしょうがない」

「色々たずねてすまないな、そろそろ旅へ戻るとしよう」

 踵を返して旅人は、再び砂漠へ踏み出した。陽光きらめく砂山の、遥かな峰の向こうへと、オアシスの影を幻視して、足跡一すじ刻み行く。

 

       *   *   *

 

 オアシスに立つ宮殿は、どこもかしこも金細工。中へと一歩踏み入れば、動物たちの黄金像と、色とりどりの紗幕が迎え、その眩しさに目も眩む。

 最奥にある玉座には、無数の翡翠(ひすい)が象嵌されて、どこから見ても光るのだ。そこに座したる砂漠の王は浅黒い肌の青年で、針金のような闇色の髪が腰まで長く垂れていた。瞳に宿る眼光は、猫目石でも埋め込むごとく、金より鋭く炯々(けいけい)と、その貪欲さを思わせる。

 彼の御前に(ひざまず)くのは、砂漠を越える旅人だ。北の砂漠の道中で、彼が出会った魔道士の、不思議な話を王様へ、伝えるために訪れたのだ。

 話を聞くと王様は、興味深げに頷いて、呟くようにこう言った。

「北の砂漠の魔導士か。砂を生み出す宝珠とは、砂を喰らって生きるとは、なんと奇妙なことだろう。もしや其奴(そやつ)は伝承にある、魔法兄弟の一人では?

 

       *   *   *

 

 遥か昔のそのまた昔、魔法が身近にあった頃。町で最も魔法に長けた、魔導士が二人おりました。その魔導士は兄弟で、兄のエルクと弟トルク、町のみんなは彼らのことを、魔法兄弟と呼びました。しかしトルクは、実はエルクに不満を持っておりました。エルクの魔法はいつだって、トルクと比べて少しだけ、僅かに優れていたのです。そのためトルクは人知れず、兄を憎んでおりました。

 そんなある時、エルクはついに、長年研究し続けてきた、魔法を完成させました。たちまち噂は広がって、町の誰もが色めきました。

「あんた聞いたか、エルクが遂に、凄い魔法を作ったと」

「もちろん聞いているともさ。しかし如何(いか)なる魔法だか、俺にはサッパリ分からない」

「俺も詳しく知らないが、噂に聞いたところでは、違う次元とこの世を繋ぐ、なんでも出来る魔法らしい」

「よく分からないが凄そうだ。彼が作った魔法なら、きっと役立つ魔法だろう」

 こんな感じの噂話が、町のどこでも話題に上っていたのです。しかしトルクは、全く愉快じゃありません。彼の魔法もエルクの魔法と、そう違わないはずなのに、いつでも一歩およばずに、先を越されてしまいます。

 トルクはエルクに言いました。

「どうしてお前は邪魔をする。俺が何かをしようとすると、お前はいつでも上を行く。いつも惨めな弟の、この苦しみが分かるのか?」

 エルクの返事を待つことも無く、トルクは部屋を飛び出した。一体どこへ行くつもりかと、慌ててエルクも後を追う。そうして二人は町を出て、北の砂漠へ入って行くと、二度と帰りはしなかった。

 

       *   *   *

 

 朝の涼気が僅かに残った砂漠の中で、二人の男がラクダに乗って、砂の世界を渡り行く。一人の男は若者で、鎖で編まれた鎧を纏い、曲刀を腰に差している。柄頭(つかがしら)にある(わし)の細工は、王宮兵士の証明だ。疑るように辺りを見やり、前の男へ問いかけた。

「この方角で正しいな?」

「心配いらん、合っておる。あの旅人の足跡が、(わし)にはしっかり見えるのじゃ」

 前を行くのは老人で、黒いローブを身に纏い、その目は地面へ向いている。砂を見つめるこの老人は、見つめる者(アルナージュラ)の名を持った、足跡探しの達人だ。多少の風が吹く日でも、五日以内の足跡ならば、彼の両目は逃さない。

 二人は王から命令を受け、魔導士の元へ行くために、旅人の跡を(さかのぼ)る。宝石好きの王様は、魔法の宝珠を所望して、もし魔導士が渡さぬのなら腹を裂いても奪い取るよう、手下に命じて(つか)わせた。

 太陽も徐々に真上へ掛かり、兵士の男は暑苦しげに、汗を拭ってうな垂れる。しかしその折、老人が、跡を辿って砂丘に上り、先を指さし張り上げた。

「確かに見えたぞ人影が。()る魔導士はあれじゃろう」

 老人の指が向く先は、砂丘が囲む盆地の中の、マントを羽織った人影だ。旅人からの言に違わぬ、砂色をした魔導士が、足跡の横に立っている。

 老人の横にラクダを並べ、兵士は右手で(ひさし)を作り、魔導士の影を遠く見た。

「やっと着いたか、あいつだな。ここからは俺の領分だ。何をされるか分からんし、あんたはここで待ってくれ」

 言うが早いか若者は、しっかり手綱を握りしめ、ラクダを走らせ砂丘を下る。無茶はするなと老爺(ろうや)が叫ぶも、すでに兵士は盆地の中で、ラクダの鞍から下りていた。

「あんたが噂の魔導士か。砂漠の王の命令で、あんたの宝珠を頂こう。、杖の頭の碧玉と、胃袋の中の紅玉だ」

 胡乱げな目で魔導士は、兵士の姿を眺め見た。そして静かに首を振り、それは無理だと呟いた。

「そう嫌がるな、もちろん王も、ただで渡せと言ってない。金ならあるし、食糧もある。あんたは何が欲しいんだ?」

「わざわざここまで御苦労だがな、これは決して渡せない。他の誰かが持っていて、手に負えるようなものじゃない」

「面倒なやつだ、ゴチャゴチャ言うな。話があるなら王様に言え、乗せてやるから付いて来い」

 魔導士を連れて帰ろうと、兵士はにわかに腕を掴んで。そのままエイッと引っ張った。しかしなぜだか、魔導士の身は鉄より重く、砂でも詰まっているようなのだ。顔を真っ赤に染めながら、兵士は必死に引き続けるが、一寸たりとも動かない。

「ええい小癪(こしゃく)な、王の御心に逆らうか。ならば今にも命令通り、腹を(さば)いて奪い取ろう」

 怒りに染まった若者は、腰から提げた曲刀を、スラリと抜いて見せつけた。魔導士は少し青ざめて、再び首を横に振る。

「それは危険だ、やめておけ。俺を斬ったら何が起こるか、分かったものではないのだぞ」

 しかし兵士は聞く気など無く、両手で(つか)を握りしめ、小脇へ引いたと思いきや、一気に(やいば)を押し出して、鋭く斜めに突き込んだ。三日月型の刀身は、自身の反りの円弧を辿り、魔導士の腹に突き刺さる。

 しめたと思った兵士だったが、刃を抜いた瞬間に、腰を抜かして驚いた。魔導士の腹の傷跡からは、血の一滴も滴らず、代わりに出るのが砂なのだ。魔導士のほうは必死に両手で傷を押さえているのだが、溢れる流砂は止まらずに、その勢いを増しながら、後から後から零れゆく。

 止まらぬ砂の圧力に、堪えきれなくなったのか、魔導士の腹は一気に裂けて、大量の砂を吐き出した。噴火のように荒ぶる砂は、魔導士自身に降り注ぎ、瞬く間にも埋めてゆく。呆気に取られて立ち尽くすまま、兵士も砂に飲み込まれ、逃げようとした老人も、ラクダと共に埋められた。

 止まることなき奔流は、とどまることなく押し広げられ、全てを飲み込み波及する。そして全く一夜のうちに、オアシスの人も宮殿も、砂の底へと沈んでいった。

 

       *   *   *

 

 エルクがトルクに追いついたのは、北の砂漠のその中の、砂丘が囲む中だった。逃げることをやめたのか、ぽつりと佇むトルクの元へ、エルクはなんとか駆け寄った。

「一体何が目的だ、下らぬことで怒るんじゃない、早く町へ戻るんだ」

 落ち着いて言ったエルクの言に、トルクは背中を向けたまま、怒りを込めて言い返す。

「これが下らぬことなのか? お前に何が分かるのだ。やはりお前はそういうやつだ」

「それなら俺は、どうしたらいい」

 そこでトルクは振り返り、その手に持った魔法の杖を、エルクに向けて突きつけた。

「簡単なことだ、俺を殺せばそれでいい。お前がさんざん苦しめた、弟一人を殺すのだ」

「考え直せ弟よ、俺がお前を殺すなど、どうして出来るわけが無い」

「そう言うだろうと思ったさ、ならばこれならどうするか?」

 ニヤリと笑って取り出したのは、呪文が書かれた魔導書だ。彼が作った種々の呪文が、悉皆(しっかい)収められている。トルクは一つのページを開き、小さく呪文を呟いた。

「何処より此処へ願われたるは、無窮に尽きぬ大地の真砂、今此の理を以てして、其は依り代に為らんとす」

 すると書面は光り輝き、呪文の文字は光となって、本を飛び出し舞い踊る。やがて呪文の一列は、彼の杖へと絡みつき、秘めたる魔力を解き放つ。

 次の瞬間、杖の頭の紅玉が、みるみる砂を生み出した。とどまることを知らないで、生まれては落ちる砂の粒。それはトルクの足元に、小さな山を作りだす。

「こいつは決して止まらずに、永遠に砂を作り出す。俺たちが住むあの町も、やがて砂中へ沈むだろう。これは俺にも止められない。村を助けるつもりなら、この場で俺を殺せばいいさ」

「それだけ優れた魔法の才を別の手段で活かす術さえ、分からないとは残念だ」

 悲しみを帯びた呟きの後、エルクは常備のナイフを抜いて、トルクの前へと歩み寄る。うつむくトルクを前にして、エルクは少しためらいつつも、ナイフを首に当てがった。

 押し付けるように引かれた刃は、トルクの首へと深く切り込み、血潮の(しずく)(ほとばし)る。一瞬遅れて血の噴水が、砂漠の大地を赤く染め、トルクの身体が地に伏した。

 トルクは息も絶え絶えに、死を目前にこう言った。

「すまんなエルク、お前に町は救えない。せいぜい独りで足掻(あが)くがいいさ、俺が感じた絶望を……」

 トルクはそれきり息絶えて、地面に伏せる屍は、砂粒となって散らされた。彼は魔法の代償に、魂さえも売ったのだ。

 唯一残ったトルクの杖は、未だに砂を生み続け、いつまで待っても止まらない。全てはトルクの罠だった。

 ナイフを手にして立ち尽くし、エルクは小さく呟いた。

「足掻けというなら足掻いてやるさ、それで償いになるのなら」

 そしてエルクは魔導書を手に、作ったばかりの新たな呪文を口にした。

「此処より其処へ願われたるは、一に通ずる異界の門扉、今此の理を以てして、我は依り代に為らんとす」

 

 

 

 

 


   後書きだって、泣きたい時はあるんです

 

 どうもこんにちは、鬼童丸です。今回はかなり〆切オーバーなので、手短に解説します。

 えーと、今回は七五調を意識して書いてみました。小説ではあんまり見ない形式ですが、調べてみたところ、木村曙という人の『婦女の鑑』などが七五調で書かれているそうです。

 けっこう無理した部分もありますし、かなり時間は掛かりましたが、書いててそれなりに楽しかったです。

 

 あと、作中で出てくる外国語は、異国情緒を出したかったのと音数を揃えたかっただけなので、どこの言葉か分かりづらくしてます。いちおう、デザルト・ベント・デル・デスティーノはイタリア語、直訳すると運命の砂漠風ですが、なんとなく挨拶っぽい感じで使ってみました。こういう架空の文化を考えるのって楽しいですね。

 そんで観察者のアルナージュラは、アラビア語で翻訳を掛けて聴き写しです。安易ですね、時間がありませんでした。それを言ったらイタリア語のほうこそどうにかしたかったんですが、これでも意外と悩んでいるんです。

 

 あと、雰囲気で分かるかもしれませんが、今回努力した点は独自の世界観を作ることでした。なんとなく無国籍っぽく、出来るだけどこの国とか特定しづらいように書いてます(単なるゴチャマゼ、というわけでもないんですよー)。

 

 

 ちなみに、砂漠を舞台にして書くのは二回目ですね。前回は夜でしたが、今回は昼。ですが冬なのでそれほど暑くないです。

 砂漠って季節が無いイメージですが、実はけっこう季節によって気温がシフトするんですね。しかも日較差が大きいので、夏の昼間は熱地獄、冬の夜間は寒地獄になるそうです。

 あと、砂漠っていうと砂ばっかりの風景を書いちゃいますけど、実際はそうでもないらしいですね。サハラ砂漠とかでも砂だらけなのは一部だけで、ゴツゴツした岩石砂漠なんかが大部分だそうです。

 

 結局、それほど短くもなりませんでした、ごめんなさい。

 あと、〆切に遅れて本当に申し訳ありません。