――もう、遅い……。
時間は戻らない……。後悔といった感情を始めとする様々な負の感情が意識を、心を塗りつぶしていく……。
私の心は深い絶望の底へと落ちていった…。
今日も空は灰色だった。こう何日もおひさまが出てこないと心がもやもやしてくる。歩きなれた通学路で私はそんなことを考えていた。
私は神奈。『あなたにより多くの神様の加護がありますように』と、母親がつけてくれたものだ。私は、この名前を気に入っていた。ちなみに、『かんな』と読むのではなく『かみな』と読む…。
「あーあ、今日もおひさま出てないや……。テンション下がるねー」
そう言ったのは妹の『真奈』。名前の読み方は『まな』。身長は小さめで、色白で、黒髪ツインテールで、少しボーイッシュな性格ではあるが、八重歯と広い額が目立つ可愛い自慢の妹だ。風の噂で私の居ない所ではツンデレな性格が目立つと聞いたことがあるが、私はツンデレの意味を知らない。今度誰かに聞いてみようか……。
「そうだね……あれ?真奈、体操服は?今日午後体育あったよね?」
と、私は真奈が体操服を持ってない事に気が付き忠告する。
「あ!ありがとうお姉ちゃん!ダッシュで取ってくる!」
こんな妹だ体操服を取ってくるだけで何かやらかす気がする。
「私も行こうか?」
私はそう訊いてみたが、
「いや、大丈夫だよ。それに、言っちゃ悪いけどお姉ちゃん走るの遅いしさ」
少し気に障ったが、事実であるため否定出来ない。
「転ばないようにね」
少し皮肉を込めてそう言った。
「わかってるよ」
真奈はそう言うと家の方へ走っていった。しかし速い、五十メートル六秒台はあんなに速いのかー。と、ついつい感心してしまう。
「そういえば、鍵持ってるの私だ…」
と、呟いたその時、遠くに小さく見えた真奈がだんだん大きくなってきた。
「気付いたか。流石にそこまで間抜けではないか……」
ダッシュで戻ってきた真奈の口が開く
「鞄の中にありましたー!てへぺろ」
「……」
授業が終わった。真奈は体育の着替えで遅れている。友達とは家の方向がまるで算数の問題であるかのように真逆のため、私は一人で先に帰ることにした。
私が住んでいるこの町は、海に面していて海から来る風はすこし強い。夏になると海開きということで海岸は多くの人で賑わう。また、植物も豊富で空気が澄んでいるように思う。
「……海にでも行ってみるか」
天気は悪いが時間は早く、帰り道がしっかり見える位置にあるため、久々に海に寄り道していくことにした。
海岸はしんとしていて誰もいなかった。まだ海開きには早く、海岸には少量の流木やら小瓶といったゴミが流れ着いていた。
「真奈が来るまで何か探してみようか……」
私は小瓶を見て周った。
「中に手紙が入ってたりして」
そんなことを考えながら私は小瓶を探した。早速確認した一本目の瓶は空っぽだった。
「まぁ、当然だよねー」
「やっぱりあるわけないかー」
そうして探すこと七十七本目、
「あ、何か入ってる!」
中に入っていたのは手紙だった。
『この裏に願いを書いて海へ流せ。何でも一つだけ叶えてやろう』
手紙には胡散臭さしか感じない、しかもどこかで聞いたことあるような文が端的に書いてあった。
「うわー……」
あまりにベタな内容の手紙で心が覚めた私は帰り道の方を見た。しかし、真奈の姿は未だ見えない。
「真奈、遅いな……」
仕方なく私は、この手紙に付き合うことにした。
この願いが悲劇を生むことを知らずに……。
続く
あとがき
はじめまして、神無です。『かみな』と読んで下さい。ハンドルネーム思いつかなかったので変えるかもしれません。
今回初めて作品を出させていただきました。が、実は半年以上前に文芸同好会に入会していたりします。では、なぜこれまで作品を書かなかったのか、理由は『忙しかった』『ネタが浮かばなかった』『文章を書くのが初めてだった』『叩かれるのが嫌だった』などありますが、まとめてしまうと、ただのサボりです……多分。
この作品については、夏休み明けから入会してきたBさんがいきなり作品を出したので、そろそろまずいなぁと思い頑張って書きました。
これまで文芸にはほとんど触れたことのない初心者なので、面白い作品を書けているとは思いません。なので、これから文章のレベルを上げられるよう頑張りたいと思っています。こんな私の作品に目を留めて下さり、ありがとうございます。
(続編はもしも人気があったら書こうかなぁ……)