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〜愛する少女はその愛故に情報となる〜

 

「おはよう、タカヒロくん」

 朝、起きて時計を見る為に携帯を覗くと、そこには少女がいた。長い銀髪が特徴的だが、どこかで聞いた事のある声が印象に残った。

 それ―彼女は、あたかもそこに初めからいたかのように佇んでいて、彼女に驚きを隠せない僕にまるで平常だと言わんばかりの挨拶をしたのだ。

 変なソフトをインストールした訳でも無いし、何よりも僕は彼女に対して名前など教えていない。となると原因は僕ではなく彼女にあるのだと考え、一つずつ話を聞く事にした。

 

 どうやら彼女は体を持たないアンドロイドらしく、インターネットを経由することで自由に行き来する事が出来るらしい。音声認識で天気予報やらを教えてくれるアプリの延長線上だと思えば良いらしい。

 無料でそういうアプリが貰えたのは役得だと思うにせよ、何故で説明できない事態が起きているのは確かだ。僕と彼女に一切の関係性を見いだせないまま名前を聞くと、その聞き覚えのあった声との一致が僕と彼女の関係を表していた。

 

 キリシマミチル。それが彼女の言った名前であり、その名前は僕の学校の同じクラスの女子の名前であり、聞き覚えのあったその声の主とを結びつけた。

 しかし彼女は先週亡くなったのだ。死因などは聞いていないが、同じクラスだったので葬式には参加した。嫌でも納得させられたのだが、どうにもいくつか疑問に思える事もあったので、聞く事にした。

「なあ、キリシマ」

「何」

「お前が死んだ事と、俺の携帯にいる事と、何か関係はあるのか?」

「ええ。私はとある人に頼んでタカヒロくんの携帯に入れるように、肉体と精神を分離したのよ」

 現実離れした話だが、現実を見せられている以上何も言い返せない。

「なんでお前はその、俺の携帯になんか住み着こうなんて思ったんだ」

 そう問いかけると、あまり間を空けずに

「逆に聞くけど、タカヒロくんは私が携帯に入っているに関しては疑問に思わないのね」

「それもちょっと不思議ではあるけど、考えても仕方なさそうだし、何よりも事実を突きつけられている以上何も言い返せないかな」

 僕がそう答えると彼女は少し黙り込み、少しの間沈黙が流れる。僕から話せる事が無いので、彼女からの返答を待つ。

「そうね。ならちょっとした超常現象を受けとめるついでに、私が住み着こうとする理由も教えるわ」

 彼女は間を置かずに次の言葉を言い放った。

「私はね、タカヒロくん、あなたの事が好きだからこうしてあなたの携帯に住み着こうと思ったのよ。私は自分の身を無くしてでも、タカヒロくんの側にいたいと思ったのよ」

 本日二度目の大きい衝撃を受け、一度目は呆然としたが、二度目は唖然とした。彼女は追い打ちをかけるかのようにグラフィックの口を開き

「そういう事だから。ちょっとした超常現象と一緒に、私の乙女心も軽く受けとめてよね」

 ぐうの音も出ない僕は、今が朝だと言う事を都合良く思い出したので、とりあえずは学校へ向かう事にした。

 

 

 

〜発明家は人の意を考えずに自分の意を実現させる〜

 

 私は発明家だ。

 ただし、どこぞの狂科学者と一緒にはしないで欲しい。私が行っているのは、犬と猫を合成したキメラを作る事ではなく、あくまで私は自分の赴くままに発明を行っている。

 例えば、私の開発した作品に食べれば多国多言語の言葉を一度に翻訳出来るようになるコンニャクイモや、人の脳内のデータを一つのハードディスクに管理し、それをインターネットに繋ぐことで擬似的に二次元に移る事が出来る装置などがある。

 何より最近開発したもので大きいのは、三次元から四次元に移れる扉を開発したのだ。これによって二次元のキャラは三次元の人々に好かれるという傾向のように、四次元の世界に行けば私もモテる。そういう崇高な理念の元に開発されたのだ。

 しかし現実は非常であり、二次元と三次元の間では一つ軸が増えているのである。それは二乗から三乗へと変わるだけで数値が大きく変わったように、三次元の世界から四次元の世界を見るとそれはもうひたすらに大きく、生物を探す事など砂漠の中から美少女もといダイヤを探すのより難しい事なのだ。故にこの扉は物置以上の価値が見いだせずに、他の発明品と同じように埃を被っていた。

 発明家というのはそんなものである。自分の私利私欲の為に、また自分の理想を築く為に新しいモノを生み出す。原動力となるものに人の便利になるから等のお人好しな考えなど最初から存在する訳もなく、ただただそれは自分の為に、そして自分の理想の為に発明をするのだ。

 そして私は、また新たな発明を行っている。

 前回は思想の時点で間違っていた。四次元に移る事に成功したまではいいものの、四次元の世界からは好かれるだけで、私の趣味嗜好に反しているかもしれない。年端もいかない少女にいくら好かれたとしても、私の心は揺らがないのである。

 そう、私は発明家だ。常に追い求める存在で無ければならないのだ。

こちからから二次元に移る装置こそあったものの、結局はプログラムである。所詮は一定の言葉しか話す事が出来ないのだ。だから今回は、二次元の方から三次元の方へ来て貰う事にした。

 この発明にあたって一番の課題であった人の構造だが、幸運にも被験者として実験に手伝ってくれる者が居た為に問題が解決出来た。まずは脳内データのバックアップを元に人の性格、趣旨、口調を司る部分を判別し、別の内容でプログラムすれば人と全く同じ考えをする人工知能―いや、人の脳の完成である。

 あとは、人の体を作り出すだけで、この発明は終わりである。これを操れば、二次元のキャラを三次元の人と同様に、そして私の事を好きであるという前提で作り上げれば、長年追い続けていた理想の世界が完成するのだ。

「フィア、もう少しだ、もう少しで君と一緒に永遠に暮らせるのだ」

 ドイツ語で四番目の名を冠するそのハードディスクに語りかけ、私は再び研究に没頭するのであった。

 一番目と二番目はこの開発の元となった二つの開発品に。そして三番目の名は被験者として手伝ってくれた彼女に付ける事にした。人でない以上名前を付ける必要があったために、僭越ながら私の開発を大いに進めてくれた事を感謝してその名で呼ぶことにしたのだ。

 

 彼は知らなかった。人の意志というモノは書き換えても本質的な部分が変わらない事を。それを知るのは、完成した三ヶ月後の事であった。

 

 

 

〜本質は同じ二人は同じ失敗をして歩みを進める〜

 

「好きです、付き合って下さい」

 話は六時間程前に遡る。

 僕の携帯にクラスメイトが住み着いたのが約三ヶ月前。面をくらったものの、彼女も今では生活に馴染んでいる。それこそまるで音声認識であれこれサポートしてくれるアプリのように。

 そして今日、うちのクラスに転入生が来た。唐突ではあったが、父親の転勤との事らしい。名前はカシマモモ。胸まであるやわらかそうな茶髪と、素直そうな雰囲気のある子だ。

 ここまでは問題無かった。転入生がいるだけの至って普通な日だった。なのに転入生のカシマは、僕を授業終わった後に用があると言って呼び出して、結果告白を受けたのだ。

 急過ぎる告白に唖然としていると、僕ではなく、そしてカシマでもなく、僕の携帯が真っ先に答えた

「何言ってるの、タカヒロくんは私のものなのよ」

 頭が痛くなりそうだった。人生初の生身の人間からの告白を、まさか人生初の告白相手が断るとは。

「あなたは黙ってて! 私はタカヒロくんと離してるの!」

 眉間を押さえていた僕に、さらに驚きの言葉が発せられた。

 何故彼女―カシマはキリシマの事を知っているのだろうか、いや、知らなかったとしても携帯から人の声が聞こえたら普通は驚くだろう。

「あなたもしかして、あの人のとこから来たわね」

「そんなあなたも窮屈そうなとこにいるのね、トラジエム」

 トラジエム? 聞いた事の無い名前だがどこの言葉なのだろうか。

「その名で呼ばないでくれる? あの人が勝手に付けただけだから。そんな事よりあなたはここにいていいのかしら?」

「良いも何も私は自分の意志でここにいるのよ。そして私は私の意志でタカヒロくんが好きなの」

「あのマッドサイエンティストの開発がまた失敗したのを聞けたのは良いけど、タカヒロくんは渡せないわ。彼と私はもう三ヶ月以上も付き合っているのだから」

 口に出しては言わないが、僕は彼女の告白について一切触れていない。

「そんな事関係無いわ。私はタカヒロくんを愛する以上に、彼を触る事だって出来る。彼への愛なら私だって負けてないわ。だからこうして彼の前に立って、思い切って告白したのよ」

「それなら私はいくらだって彼の好きな容姿に変えられる。あなたは何? そのコテコテの作られた見た目は。ここは二次元じゃないのよ」

 とりえあずあの人とやらがボロクソ言われているのは理解出来た。

「言いたい事はたくさんあるが、俺の好みとかは一切関係ないのな」

「「え?」」

 このままだとキリがないので、話に割り言って話す。

「今更だが、俺はロングよりもショートのが好きだぞ」

「「え」」

 そう言うと二人とも少し呆然とした後、カシマはもの凄い勢いで逃げるように帰宅し、キリシマはその日は携帯から姿を見せなかった。

 一人残された僕は、これから二人に振り回される事を予感して大きなため息を一つ吐いた。こういう時になんと言えばいいのか、考える前に口から言葉が出て来た。

 やれやれ。

 

 後日、二人とも髪を切って表れたのは言うまでも無い。

 

 

 

 

 あとがき

 初めまして。Mr.06と言います。

 今年どころか去年も全く出していなかったので、顔を覚えている人は少ないと思います。

 一応始めにですが、各所にお詫びを申し上げます。

 昨年度、文芸部から降格して同好会へとなりました。

 その原因ですが、僕の不注意と不適切な対応がもたらしたものです。この件で、各所に迷惑をおかけしました事を深く反省しています。

 この事についてもっと早く、そして直接言えたら良かったのですが、どうしても言い切れずに今の今まで何もせずにきてしまいました。

 昨年度は、学生会及び群馬高専の方々、そして文芸部に関わったOBの方、非常に申し訳無いことをしました。

 文芸同好会の方ですが、現三年の会員は複数人で作業を分担して一人でいろいろ背負わないようにしっかりとサポートしていきたいと思っています。どうか暖かい目でみてやって下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、今回は銀髪ロングのアンドロイドを登場させるということで、ちょっと苦労しました。まあプロット作ってた時に渡りに船な内容だったので、元々高専祭で書きたい方もありましたがこちらを先に作成、そして今日冊子に投げました。

 久しぶりでしたが相変わらずの作品だったかなーと。しかし書かないと書かないでいろいろと変わりますね。やはりこういうのは日々精進あるのみです。

 とりあえず今回は短編を三つ、それをまとめて一つの作品として作ってみました。あえて一ページで終わらせたというのもあって長さに苦労する場面が多々ありました。

 あくまで個人的な趣向として、日常系を主に書いているので、今回は割りと困ったとこもあります。なんだこの「真面目でクールで知的で無口な銀髪ロングヘアーのアンドロイド少女(コードネームはトラジエム)」って、合同テーマでこんな苦労させられると思わなかったですハイ。

 という訳で今回は日常+非日常をアクセント程度に足してみました。例えるならスイカの塩とか、卵かけご飯に鰹節とかそういう感じです。

 日常系である以上、そこまで非日常に足を突っ込みません。あくまでそれはそうなっている、そういうものだと思う事が大事です。説明が面倒だとかそういう理由では断じてないです。

 んで伏線としては、ヒロイン二人のイニシャルは両方ともMKで、それぞれ三番目と四番目、要はMk-3という事です。こんぐらいしかテーマには沿ってませんがこれぐらいでいいですよね。

 ちなみに書いてて一番楽だったのは二章目でした。何も考えないって楽。とっても楽。

 

                                                                                       Mr.06

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